富士山や富岡製糸場がユネスコの世界遺産に登録されたのが
記憶に新しいですが、ユネスコの諮問機関から明治時代の産業革命遺産が
世界遺産へ登録勧告されたとのニュースが入りました。
世界文化遺産への登録を目指している「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」について、ユネスコの諮問機関であるICOMOS(イコモス)は5月4日、名称を一部変更したうえで世界遺産に登録することがふさわしいとの勧告を通知した。
政府は4日、幕末から明治期の日本の急速な近代化を示す「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」(福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、山口、岩手、静岡の8県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が、名称を「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」に変更した上で世界文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。
製鉄や造船、石炭産業の分野において日本が近代産業国家へと移行していった「産業革命遺産」として、「軍艦島」の名称で知られる長崎県の端島(はしま)炭坑や福岡県の官営八幡製鐵所、静岡県の韮山反射炉など、九州の5つの県と山口、静岡、岩手の各県にある合わせて23の資産で構成される。広域の複数資産を一括する「シリアルノミネーション」という手法で推薦していた。
シリアルノミネーションとは
地理的には連続性がなく(隣り合っていなく)ても同じ歴史的な背景や文化、特徴、自然環境を持っていて、同じ価値基準を同様に満たしてる物件について、ひとまとめに登録してしまおうというもの。
シリアル・ノミネーション|世界遺産検定のお勉強ブログ(現在休止中)
該当の23の資産を整理
(出典:西日本新聞 )
対象となる資産は、ぱっと見た感じでも多すぎて良く分かりません(笑)。
資産の多い順に県別にすると、内訳は以下のようになります。
長崎県 8
山口県 5
鹿児島県 3
福岡県 2.5
熊本県 1.5
佐賀県 1
静岡県 1
岩手県 1
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総資産数 23
※県がまたがっているものは0.5でカウントしました。
それぞれの資産の詳細は以下です。
(1) 萩反射炉
萩藩が西洋式の鉄製の大砲をつくるために建造した、金属を溶かすための炉です。現存する当時の反射炉は国内に2基しかなく、日本の産業史上、貴重な遺産となっています。
(2) 恵美須ヶ鼻造船所跡
幕末に外国船の接近を警戒した幕府の要請を受けて、萩藩が伝統的な和船の技術を使って西洋式の軍艦2隻を建造したとされる造船所の跡地です。
(3) 大板山たたら製鉄遺跡
砂鉄を原料に木炭を燃焼させて鉄を作っていた江戸時代の製鉄所跡です。
(4) 萩城下町
萩藩の政治的・経済的拠点で、近世の封建社会が分かる町として今に受け継がれています。天守閣のあった萩城跡などがあります。
(5) 松下村塾
日本の近代化や産業化を進めるうえで、重要な役割を担った数多くの人材を輩出した教育施設で、吉田松陰が指導したことで知られています。
(6) 旧集成館
薩摩藩が建設した造船や紡績、それに製鉄などの工場群で、当時の機械工場は、現存するものとしては国内で最も古い洋風の工場で、このほか、大砲の砲身などを製造した反射炉の跡などがあります。
(7) 寺山炭窯跡
幕末に木炭を製造していた薩摩藩の炭窯の跡です。
(8) 関吉の疎水溝
旧集成館」に引かれていた水路で、取り付けられていた水車の動力を利用して大砲の砲身などが製造されていました。
(9) 小菅修船場跡
明治時代初期につくられた船を修理するための施設の跡で、外見がそろばんのように見えるため、「そろばんドック」の愛称で知られています。
三菱長崎造船所は、(10)~(13)の資産で構成されています。
(10) 第三船渠
明治38年に完成した大型の船を修理するドックで、イギリス製の排水ポンプは今も使われています。
明治42年に設置された150トンのつり上げ能力があるクレーンで、今も現役で使われているいわゆる「稼働資産」です。
(12) 旧 木型場
明治31年に建設されたれんが造りの建物です。鋳型を製造するのに必要となる木型を製作していました。造船所内にある最も古い建物で、史料館として使われています。
(13) 占勝閣
迎賓館として使われた洋館で、現在も、進水式などの祝賀会などの際に利用されています。
(14) 高島炭坑
長崎市の西の沖合にある高島にあります。石炭の需要の高まりを受けて、幕末から明治にかけて開発された海洋炭坑で、日本の炭坑近代化の先駆けとなりました。
(15) 端島炭坑
その姿形から「軍艦島」の通称で知られています。高島炭坑の技術を引き継ぎ、発展させ、炭坑の島として開発されました。閉山後、無人島となりましたが、現在は、一部に限って上陸できるようになり、長崎市の新たな観光名所となっています。
(16) 旧グラバー住宅
石炭や造船などの当時の日本の主要産業の近代化に貢献したスコットランド出身の貿易商、トーマス・グラバーの活動拠点となりました。長崎市を代表する観光名所の1つとなっています。
福岡県・八幡エリア (2つ)
・旧本事務所
明治32年に建設され、八幡製鐵所トップの長官や外国人技師が執務した場所で大正時代以降は研究所として使われました。屋根瓦に赤れんがという和洋折衷の建築様式が特徴です。
・修繕工場明治33年に建てられた現存する国内で最も古い鉄骨構造の建物です。今も使われており、内部では100年余り前と同じクレーンが稼働しています。
・旧鍛冶工場
明治33年に建設され金物や大型の工具が製造されていました。現在は資料室として使われています。
製鉄に必要な水をひくため明治43年に作られました。11キロ余り離れた製鉄所まで今も水を送っています。
福岡県から熊本県の三池エリア (2つ)
(19) 三池炭鉱、三池港
福岡県大牟田市と熊本県荒尾市にまたがる以下の資産が対象です。
・宮原坑(大牟田市)
明治31年に石炭の採掘が始まり、高さ22メートルのやぐらは、鋼鉄製のものとしては、現存するものの中では国内で最も古いとされています。
明治時代に作られた炭鉱としては国内で最大の規模です。
石炭を運んだ5キロ余りの専用鉄道の跡で、レールは撤去されていますが、コンクリートの枕木が残っています。
・三池港 (大牟田市)
石炭を積み出す港として、100年以上前につくられ、炭鉱がなくなった今も現役の港として使われています。港の水位を保つために作られた「閘門」と呼ばれる水門があります。
明治20年にオランダ人技師が設計して建設され、一時期、三池炭鉱で採掘された石炭を国外へ輸出する港として利用されました。今も石畳のふ頭や水路が残っています。
幕末に佐賀藩がつくった海軍の施設の跡で、日本で初めての実用的な蒸気船が建造されました。
江戸時代末期に、外国から国内を守るための大砲を作った、現存する中では日本最古の製鉄施設です。
江戸時代末期に作られた現存する国内最古の西洋式の高炉の跡などからなる史跡です。
(上記出典全て:「明治日本の産業革命遺産」世界遺産に登録を勧告 NHKニュース )
韓国は猛反対
イコモス勧告に合わせたかのように、韓国国会の外交統一委員会では4日、日本による「明治日本の産業革命遺産」の登録推進を非難する決議を行った。韓国側の主張は、23施設中、7つの施設で日本側による強制労働が行われたというもの。日本による植民地時代に朝鮮半島出身の5万7900人が、強制的に動員されたとしている。
日本政府は、産業遺産の対象は1910年(日韓併合)までのもので、韓国側が主張する第2次世界大戦下での労働とは異なる問題だと反論した。なお時系列については、「韓国では、日本がこの施設で蓄えた国力で日清戦争などを引き起こし、朝鮮を植民地化したという認識もあります」(テレビ朝日)といった報道も出ている。
こういった動きもありますが、勧告通りに登録されると
日本での世界文化遺産は、昨年の富岡製糸場に続いて19番目となります。
ちなみに現在の日本の世界遺産は以下のリンク先にあります。
結果が出るのはまだまだ先でしょうが、無事に登録されるといいですね。